じゃんごの「誰かこのゲームやってくれ!」

webで見つかるゲームのルールをてきとーに訳して紹介するよ~

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WYSIWYG 【ルール】

創作トランプ

『WYSIWYG(ウィジウィグ)』は2000年にThe Games Journalに発表されたトランプゲームです。
 作者のラリー・レヴィ(Larry Levy)氏はトランプを中心にゲームを何種類も創作・公開しており、あのマニアックな『アグリコラ Xデッキ』のデザイナークレジットにも名を連ねています。

 さすが『Xデッキ』デザイン参加者と言うべきか、奇妙で読みにくいWYSIWYGというタイトルはコンピュータ用語、「What You See Is What You Get=見たままが得られる」の各単語の頭文字をとって省略したものを、そのままに使っています。
 コンピュータ分野で言われるWYSIWYGは、例えばモニタの表示通りに印刷できること、そのように文書・画像作成アプリケーションを作ることを指しています。コンピュータのユーザーインターフェィスでは、表示解像度や環境の違いなどの関係で「見たままが得られない」ケースが多かったことから生まれた言葉です。

 作者ラリー氏はそんなWYSIWYGを、このゲームにふさわしいタイトルだとしています。
 ゲームの『WYSIWYG(ウィジウィグ)』は、古くからあるジャーマン・ホイストやハネムーン・ブリッジ(本来は4人プレイのブリッジを2人でプレイできるようにしたもの)といったトリックテイキングゲームを元に、プレイヤーが実際にカードをプレイする前に得られる情報が多くなるようなアイデアが盛り込まれています。
 プレイヤーは自分と相手の状態を先に確認した上でプレイする……「なら、見たままが得られる。そうだろ?」といったニュアンスが込められているわけですね(もちろん実際は、先に得た情報で考えた通りにはならなかったりするのですが)。
 ルールはまさにジャーマン・ホイストのバリエーションとでも言うべきもので、ラリー氏の弁では、
コンピュータエイジに最適な、古い要素と新しい要素のブレンド
 ということのようです。

 2000年に発表された『WYSIWYG(ウィジウィグ)』は、2007年に作者の手による改定ルールがboardgamegeekの登録ページに提出され、初版にあった「ベーススコアの算出に計算表を使わなくてはならない」という欠点が解消されました。
 よってここでは、2007年の改訂版に基いて、ルールを紹介したいと思います

The Games Journal掲載の初版ルールはこちら→http://www.thegamesjournal.com/rules/WYSIWYG.shtml

BGGの登録ページはこちら→http://boardgamegeek.com/boardgame/29578/wysiwyg


【ゲームの概要/勝利条件】
 このゲームは2人対戦のトリックテイキングゲームで、互いにカードを出してどちらが勝ちかを判定すること=トリックを前半戦13回、後半戦13回の計26回行なってスコアを競います。
 スコアをどちらが何点取れるかは、プレイヤーが事前のビッド(入札)を達成できたか否かによって変わります。
 ビッドと26トリックのプレイを繰り返し、先に50点以上のスコアに達したプレイヤーが勝利です。

【プレイ人数】
 2人

【使用する道具】
 ジョーカーを抜いた通常のトランプ1組(52枚)。
 スコア等を記録するための紙と筆記用具もあるとよいでしょう。

【カードの強さ】
 プレイヤーは互いにカードを出しては、その強さを比較することになります。カードの強さは以下のように、ランク(描かれた数値)で順位が決められています。

 〈強い〉A→K→Q→J→10→9→8→7→6→5→4→3→2〈弱い〉

【切り札】
 切り札(トランプ)は4つのスートのどれか1つが選ばれます。どのスートが切り札になるか、あるいはどのスートも切り札にならないノートランプ(切り札なし)の状態でプレイすることになるかは、ビッドでデクレアラーとなったプレイヤーによって決定されます(※後述の【ビッディング】参照)。

 切り札となったスートのカードは他のスートのカードより強いとみなされます。
 例えばハートが切り札となったら、ハートのカードはランクにかかわらず他のスートのカードにトリックで勝ちます。ハートのカード同士では上の【カードの強さ】の通りに強弱を判定しますが、相手がスペード、ダイヤ、クラブなら、ランクに関係なくハートのカードの勝ちです。

【手札を配る】
 向かい合わせに席に着き、適当な方法でディーラーを決めたら、ディーラーはすべてのカードをよくシャッフルし、プレイヤーそれぞれに裏向きで13枚ずつ手札を配ります。
 残りのカードは裏向きの山札にして、場の中央に置いておきます。

【手札の評価】
1.評価点を求める
 プレイヤーはまず、各自に配られた13枚の手札の「評価点」を求めます。ここで求める評価点はプレイヤーの持つ手札がどれだけ良いか、そのおおまかな目安です。より良い(評価点が高い)手札を持つプレイヤーは少なくとも初期の手札の状態において、それだけ有利とみなされます。
 評価点は以下の点数を合計して算出します。

  A(エース)のカード  =1枚につき3点
  K(キング)のカード  =  〃  2点
  Q(クイーン)のカード =  〃  1点
  手札の中で最も枚数の多いスートのカード
                =  〃  1点


例)次のような手札がプレイヤーに配られたとします。

  スペード→K、Q、7
  ハート →A、Q、8、5、2
  ダイヤ →A、9
  クラブ →Q、J、3

 これら13枚の評価点は、

  ・2枚のAで6点
  ・1枚のKで2点
  ・3枚のQで3点
  ・最も枚数の多いスートはハート。5枚で5点

 以上のすべてを合計して16点がこの手札の評価点となります。

2.ベーススコアの決定
 プレイヤーは計算し終えた各々の評価点を相手に告げます。申告するのは計算で導かれた評価点のみで、その内訳(何枚のAがあったか等)を話す必要はなく、ゲームを楽しむためには話さないほうがいいでしょう。

 双方の評価点が発表されたら、続けて各人の「ベーススコア」を計算し、決定します。
 ベーススコアはプレイヤー間の評価点の差に基づいて決まり、以降の【ビッディング】や最終的なスコアの基準となります。これは以下の計算式で求められます。

  ベーススコア=(自分の評価点+10)-相手の評価点

 各自のベーススコアは忘れないように紙などにメモしておいてください。
 なお、ベーススコアは計算の結果、マイナスの数値になることもありえます。

例)あなたの評価点が11点、相手が15点の場合。

  あなたのベーススコア=(11+10)-15=6点
  相手のベーススコア =(15+10)-11=14点

【ビッディング】
 手札を評価しベーススコアの計算を終えたら、ビッドを行います。
 これは手札をプレイするのに先立ち、自分はどれくらいトリックに勝てるかを予想して、相手に対して宣言・入札することです。ビッドは端的に数値を宣言することで行われ、より大きな数値を入札したプレイヤーがそのビッドの達成(※後述の【手札のプレイ】3.ビッド達成の可否を参照)を目指すデクレアラー(宣言者)となり、同時に切り札のスートを決定する権利を得ます。

1.ビッドする
 最初にビッドするのはベーススコアが低いほうのプレイヤーです。
 ビッドの基本はゼロ以上の数を入札する(口頭などで相手に伝える)ことです。一方のプレイヤーがビッドしたら、次にもう一方がビッドすることになり、ビッドの終了まで交互に番を繰り返します。自分がビッドする番になった時に選べるのは入札を含む以下の3つ、そして「ダブル」に対して行う「リダブル」です。

・数を入札する
・パスする
・「ダブル」を宣言する

 数を入札することを選んだ場合は、直前に相手が入札した数より大きな数をあげなくてはなりません(一番最初はゼロ以上ならどんな数でも可能)。そして相手へとビッドする番が移ります。

 相手より大きな数を入札したくない、するのは不利であると判断した、といった場合はパスします。どちらかのプレイヤーがパスすると、そこでビッドは終了となります。
 ただし、一番最初のビッドでパスした時は例外的に、ゼロを入札したものとして扱い、相手に番が移ります。

「ダブル」は、直前の入札を確認して相手はビッドを達成することができない、と判断した時に、相手に対して最終的にプレイでの得点を倍にすることを宣言するものです。
 これを選択したすると再び相手に番が移り、相手は、

・パスする
・「リダブル」を宣言する


 の、いずれかをしてビッドは終了となります。
「リダブル」を宣言した場合は、最終的な得点は4倍となります。

 ビッドが終了すると、それまでに最も大きな数を入札していたプレイヤーがデクレアラーになります。

2.切り札の決定
 デクレアラーは4つのスートのうちのどれか1つを切り札とするか、ノートランプ(切り札なし)を選択して宣言します。
 ここで選択された切り札のスート(ノートランプの場合は切り札となるスートはなし)はプレイ中に変更されることはありません。

3.ゴールの決定
 デクレアラーがビッドで最後に入札した数と、デクレアラーの手札のベーススコアを合計します。
 この合計値を「ゴール(目標)」と呼び、プレイによってこの数値以上の得点を上げることをデクレアラーは目指すことになります。逆に相手のプレイヤーは、デクレアラーがゴール以上得点しないように、それを阻止することが勝利につながります。

  ゴール=デクレアラーが最後に入札した数値+デクレアラーのベーススコア

 切り札のスート(もしくはノートランプ)とゴールは忘れないようにメモしておきます。

例)あなたはベーススコア6点、相手は14点。まずあなたが「11」を入札してビッドが始まりました。これで相手がパス(かダブルを)すると、あなたがデクレアラーでゴールは17(11+6)です。もし相手がパスせず「12」を入札し、あなたがパス(かダブルを)すると、相手がデクレアラーとなってゴールは26(12+14)となります。

【手札をプレイする】
 切り札とゴールが決定し、それらをメモしたら、デクレアラーは山札の上から2枚を引き、その2枚を表向きに場に出し公開します。
 続けてデクレアラーは手札から1枚好きなカードを選んで、表向きに場に出します。

 このように手札から場に最初のカードを出すことを「リード」、出したカードのことを「リードカード」と呼びます。リードカードが場に出たら、相手のプレイヤーも自分の手札から1枚出します。これを「フォロー」と呼びます。
 リードとフォローで場に2枚のカードが出ることを「トリック」といい、この2枚のカードの強さを比べて、トリック毎の勝敗を決めます。

 プレイでは、以下の手順で計26回のトリックが繰り返されます。
 最初のトリックから13トリック目までは「前半戦(ファースト・ハーフ)」、その後の14トリック目から最後の26トリック目までが「後半戦(セカンド・ハーフ)」で、デクレアラーが前後半合わせて何トリック勝利したかがスコアを決める大きな要素になります。

1.前半戦のトリック
 最初の1トリック目でリードするのはデクレアラー、以降は直前のトリックで勝ったプレイヤーがリードします。
 フォローは、リードカードと同じスートのカードを出さなくてはなりません(この規則を「マストフォロー」といいます)。フォローではリードカードと同じスートが手札にない時に限り、自由に好きなカードを出すことができます。

 2枚のカードを比べて、どちらが勝ったかを判定します。
 どちらも同じスートのカードなら、より強いカード(※前述の【カードの強さ】を参照)の勝ちです。2枚それぞれのスートが異なる場合は、切り札が出ているなら切り札のカードが勝ち、切り札が出されていないならリードカードの勝ちとなります。

 勝ったプレイヤーは、トリックで出された2枚のカードのうち1枚を自分の前に裏向きに置きます。もう1枚は山札の隣に裏向きに捨てます。
 ここで自分の前に置く裏向きのカードは、ビッド達成の可否を判定し、最終的なスコア計算で用いる暫定の点数(マーク)を記録するためのもので、2枚のうちどちらを選んでもプレイやスコアに影響はありません。意味があるのは獲得した枚数だけです。

 さらに、勝ったプレイヤーは山札から引かれて表向きに公開されていた2枚のカードのうち、好きなほうを選んで手札に入れることができます。残ったもう1枚を負けたプレイヤーは手札に入れます。
 そして最後に、勝ったプレイヤーはあらためて山札の上から2枚を引いて表向きにして場に公開し、このプレイヤーのリードで次のトリックが始まります。

 以上の流れを13トリック目まで繰り返します。

2.後半戦のトリック
 基本的には前半戦と変わりありません。
 ただし、勝ったプレイヤーはトリックで出されたカードを2枚とも裏向きにして自分の前に置くことになります。また、最後の26トリック目だけは、それまでに捨てられたカードからも1枚取って裏向きのまま自分の前に置きます(トリックで出た2枚+捨てられたカード1枚で計3枚を自分の前に置く)。

 前半の12トリック目の終わりに山札がなくなり、次の13トリック目からは山札から2枚引いて公開することはなくなります。13トリック目の終わりに公開された2枚を各プレイヤーが1枚ずつ手札に入れると、これもなくなります。
 ですので、後半戦でプレイヤーはもう公開されたカードを手札に入れることも、勝ったプレイヤーが上から2枚引いて公開することもなくなります。

3.ビッド達成の可否
 両プレイヤーの手札が1枚もなくなり、全26トリックが終了するとプレイは終わりです。
 デクレアラーはトリックに勝って自分の前に置いた裏向きのカードの枚数を数えます。カード1枚につき1マークとし、何マークになったかを確認して発表します。例えばカード10枚なら10マーク、15枚なら15マークです。

  マーク=デクレアラーがトリックに勝って自分の前に置いたカードの枚数

 このマークが、プレイ前のビッドで決定したゴールの数値と同じ、もしくはそれより大きければビッド達成です。
 マークがゴールよりも少なければ、デクレアラーのビッドは失敗したことになります。

※プレイで得られるマークの最大値は40(全トリックに勝利すると前半戦で13マーク、後半戦の25トリック目までで24マーク、最後の26トリック目で3マーク)です。デクレアラーがビッドを達成するにはゴールの数値以上のマークが必要になりますから、ビッドの時にゴールが40より大きくなるような数を入札すると、どうやってもビッドを達成できなくなってしまいます!

【スコア計算】
 ビッドが達成されたか否かを確認したら、スコアを計算します。

1.ビッドが達成された場合
 ビッドが達成されると、以下の式で計算されたスコアがデクレアラーに入ります。

  スコア=マーク-デクレアラーのベーススコア

例)ベーススコア6点のあなたが11を入札してゴール17を目指してプレイした結果、19マークでビッドを達成したとします。スコアは19-6=13点になります。

2.ビッド達成に失敗した場合
 失敗だった時は、相手(デクレアラーではないほう)のプレイヤーにスコアが入ります。
 ゴールよりもデクレアラーの獲得したマークが1足りない時は2点、足りない数が2以上の時は以下の式でスコアを計算します。

  スコア=(ゴール-マーク-1)×5

 つまり2足りなければ5点、3足りなければ10点、4足りなければ15点…と、1足りないごとに5点ずつ加算されていきます。

例)ベーススコア13点のあなたが11を入札して、18マークしか獲得できずビッドが達成できなかったとします。ゴールは24ですから(24-18-1)×5=25点のスコアが相手に入ります。

3.ダブルとリダブル
 ビッドでダブルが宣言されていた場合はスコアは2倍、リダブルなら4倍になります。これはビッドが達成されたか、失敗したかにかかわらず、2倍もしくは4倍されます。

【スコアの記録とゲーム終了】
 スコアはメモしておき、すべてのカードを集めて再び【手札を配る】からゲームを再開します。新たなディーラーは、前回ディーラーではなかったほうのプレイヤーです。
 こうしてゲームを繰り返して得たスコアは合算されていき、どちらかのプレイヤーのスコアが50点以上になったら、そのプレイヤーが勝利してゲーム終了です。


 ビッドありの2人対戦マストフォロートリックテイク、と『WYSIWYG(ウィジウィグ)』を一言で表せばそうなるでしょう。
 根幹はジャーマン・ホイストのシステムそのままなのですが、手札評価とそれに基づくスコアリング、さらにそのスコアを見越したビッドが加わることで、独自性を主張しています。
 相手と自分の評価点(手札の強さ)を把握した上で、どれだけの数をビッドできるのか? がまず考えどころになる気がします。

 作者のラリー・レヴィ氏がこれ以外に発表したトランプゲームでは、演繹推理ゲーム(ロバート・アボットの『エリューシス』等が例)である『Deduce or Die』がBGGでの評価も高く人気です。
 他にもラリー氏はトランプやダイスゲームをいろいろ公開しておられるので、いずれそれらも紹介してみたいと思います。

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Finesse 【ルール】

創作トランプ

独創的でバランスの良いトリックテイキングゲーム(An ingenious and well balanced trick-taking game)」
 という一文が、www.pagat.comの創作ゲーム(invented games)リストを眺めていると、目に飛び込んできました。
 pagat.comは世界中のトランプを中心とする伝統的なカードゲームを整理・収蔵しているサイトですが、プロの作家やデザイナーも含む有志の発表した近年のゲームも扱っています。その中でも短い文ながらかなり好意的なコメントが寄せられていることに、まず一見して気を惹かれました。

 その『フィネス(Finesse™)』というゲームは2000年にマイルス・エドワード・アレン(Miles Edward Allen)氏が発表したもので、作者によれば、ブリッジやピノクルといったトランプゲームを参考に「技術を生かしたプレイの機会が得られること」をコンセプトにデザインされたと言います。
 タイトルの「フィネス」とは英語で「技巧」とか「権謀」を表す名詞で、コンセプトをそのままに表したゲーム名です。また、このゲームと同じくトランプのトリックテイキングゲームで、いっそう長い歴史と世界中に多くのプレイヤーを持つ『ブリッジ』のプレイ用語にもフィネスというものがあり、それも意識されているのかもしれません(ブリッジ用語のフィネスについては、興味のある方はwebで検索してみてください)。

『フィネス(Finesse™)』のルールは現在、アレン氏の公開していたページがweb.archive.orgに残されていて、pagatのリストからはそこへとリンクが貼られています。
 タイトルに商標登録(トレードマーク)を表すTMが添えられているのですが、他に公開されたり出版された形跡はなく、またアレン氏は残されたご自身のページで「ルールのコピー、配布に関して著作権者(アレン氏)はこれを認め、権利の行使を留保する」旨を2000年6月付で宣言しています。
 これならば、基本的にフリーか非商用利用可のゲームしか扱わない本ブログでも紹介できそう…ということで、ルールを読み込んでみることにしました。

 このゲームを一言で表すなら「ペア戦でビッドなし、マストフォローのプレーンなトリックテイキング」です。
 プレイ参加人数は4人固定、2人ずつペアを組んで、ペア対ペアで得点を競います。ルールは比較的簡単(トリックテイキングに分類されるゲームとしては)なので、
「ビッド? マストフォロー? トリック?…なにそれ」
 という方にも容易にプレイできるものと思われます。特にビッド(事前に自分の勝ち数を予想して宣言する)がない、というのはこの種のゲームに不慣れな者にはとっつきやすく、トリックテイキングや日本国内ではあまり一般的とはいえないペア戦トランプゲームを試してみるのに、よいきっかけとなるかもしれません。

 以下、ルールの紹介はアレン氏のwebページ「Games from Momentpoint Media/A Game of Cards by Miles Edward Allen」を参照します。

A Game of Cards by Miles Edward Allenはこちら→http://web.archive.org/web/20030206035444/http://members.bellatlantic.net/~votation/games/gamestart.htm(※web.archive.orgに収蔵されたアーカイブです)


【ゲームの概要】
『フィネス(Finesse™)』はペア同士で対戦するトリックテイキングゲームです。
 特定数のトリックを取る(各人が1枚ずつカードを出して強さを比べ、勝つ)などでポイントが得られ、プレイを繰り返して先に累計42点以上に達したペアが勝利します。
(※より細かな勝利条件は後述の【勝利条件】の項をお読みください)

【プレイ人数】
 4人。2人1組のペアになります。

【使用する道具】
 プレイにはトランプを用いますが、通常のトランプ1組に何枚かカードを追加しなくてはなりません。そのため、同じ形と裏面のデザインを持つトランプが2組必要になります。
 ジョーカーを除いたトランプ52枚に、各スート(マーク:)それぞれのキングとクイーンとジャックをもう1枚ずつ足してください。52+(3×4)=64枚がこのゲームを遊ぶためのカード1セットになります。

【カードの強さ】
 出されたカードの強さを比べることがルールの基本なので、カードの強弱の順位は重要です。カードの強さは以下のように、カードに書かれたランク(数値)で順位が決められています。

 〈強い〉A→K→Q→J→10→9→8→7→6→5→4→3→2〈弱い〉

 前述のように使用するトランプ64枚のうち、KとQとJはまったく同じカードが2枚入っています。もし同じカードが同トリックで出された場合は、先に出されたほうが強いとします。

【切り札】
 ランクに対してスート()は順位に基本的に関係ありませんが、プレイ中はほとんどの場合で、4つのスートのうちどれか1つが「切り札(トランプ)」に指定されます。切り札となったスートの16枚(強い順にA、K、Q、J、10~2)は、他のスートのカードよりも強いと判定されます。

 例えば「ハートが切り札」だったとすると、ハートのカード同士を比べた場合はハートの2は最弱です。しかし他のスペード、ダイヤ、クラブのカードと比較した時には、切り札のうちの1枚であるハートの2は他のカードよりも強いのです。相手がKであろうとAであろうと、同じハートのカードでよりランクが上位でないかぎり、切り札は判定で勝利します。

 このためどのスートが切り札になるかはゲームを大きく左右しますが、その指定はプレイヤーによって行われ、その選択によっては「切り札なし(ノートランプ)」となる(カードの強さはランクのみに依存し、スートはまったく関係なくなる)こともあります。
 プレイヤーがどのように切り札スートを指定するかは、後述の【プレイの手順】2.切り札の決定に詳述します。

【ペアと席順】
 プレイヤーはプレイするための場(テーブル等)を囲むように席に着きますが、この時ペア同士は向き合うように着席します。
 これは麻雀をする時のように、四角い卓の四方に着席するのを想像するとわかりやすいでしょう。麻雀では各席を東西南北で表しますが、これで表現すると南北のプレイヤー2人、そして東西のプレイヤー2人がペアとなり、南北vs東西でゲームを争うことになります。

席順
※場を四方から囲むように着席。南北と東西がペア

【手札を配る】
 全員が席に着き、適当な方法で最初にディーラーとなるプレイヤーを決めたら、ディーラーはすべてのカードを裏向きでよくシャッフルし、上から12枚のカードを数えて裏向きのまま場に重ねて一つの山にしておきます。
 続けてディーラーは残りの52枚を裏向きで、自分の左隣から1枚ずつ時計回りで配っていきます。配り切ると1人13枚ずつとなり、この13枚が各プレイヤーの手札となります。

【テーブルカードを配る】
 ディーラーは次に、最初に分けて場に置いておいた12枚のカードの山を手に取り、今度は表向きに1枚ずつ、自分の左隣から時計回りに配り切ります。
 配られたこれらのカードは場の各人の前に表向きのまま、全員が確認できるように各人の前に並べて置かれ、手札の中には入れません。この各プレイヤーに3枚ずつ配られ場に公開されているカードをテーブルカードと言います。

 全員にそれぞれ13枚の手札と3枚のテーブルカードが配られたら、プレイ開始です。

【プレイの手順】
 このゲームでは、プレイヤーが順に1枚ずつカードを場に出し、誰が一番強いカードを出したか判定する一連の流れ「トリック」を、各人の手札がなくなるまでの計13回繰り返します。
 トリックで一番強いカードを出し勝つことを「トリックを取る」と言い、各ペアが2人合計で全13回中の何トリックを取ったかで基本的な獲得点数が決まります。
 以下に第1~13トリックまでの流れを記します。

1.リード
 第1トリックは、まずディーラーの左隣のプレイヤーが1枚カードを場に表向きに出します。
 この最初に1枚目のカードを出すことを「リード」と呼び、 リードするプレイヤーは自分の手札から、もしくはペアを組んでいるパートナーのテーブルカードから1枚を選んで場に出します。
(※テーブルカードからリードする場合、パートナーの前に置かれたものからしか出せないことに注意! 対戦相手ペアのものはもちろんのこと、自分の前にあるカードも使うことはできません)

2.切り札の決定
 第1トリックでリードされたカードのスート()が切り札となります。
 リードするプレイヤーは、リードでカードを出すのと同時に「切り札なし(ノートランプ)」と宣言することで、切り札なしでトリックの判定をすることも選択できますが、これを宣言する際には必ずAのカードを出さなくてはなりません

・「切り札なし」を宣言するために出すAのカードはどのスートのものでもかまいません。また、そのAは手札から出したものでも、テーブルカードから出したものでも、どちらでも宣言できます。

・Aのカードを出して「切り札なし」の宣言をしないことも可能です。出したAのスートが切り札となります。

第1トリックのリードのみが切り札(もしくは切り札なし)を決定します。第2~13トリックでは、そこで決定した切り札がそのまま適用されます。第2トリック以降はどのカードがリードされようとも、第1トリックのリードで決定された切り札のまま変更されることはありません。

3.フォローとその順番
 リードされたら、他のプレイヤーも順にカードを手札から1枚、表向きに出します。
 このリードに対して他のプレイヤーが各人1枚ずつ手札を出すことを「フォロー」と言います。
 フォローする順番は時計回りで、リードが手札から出されたか、テーブルカードから出されたかによって開始するプレイヤーが変わります。手札からリードされた場合はリードしたプレイヤーの左隣、テーブルカードからの場合はそのカードを前においていたプレイヤーの左隣(リードしたプレイヤーの右隣)からの開始です。

 フォローではどのプレイヤーもテーブルカードを使うことはできず、必ず自分の手札から1枚選んで出すことになります。つまり、このゲームで各プレイヤーがテーブルカードを使うことができるのはリードの時のみ、しかもパートナーの前にある3枚のうちのどれかだけなのです。

 リードをテーブルカードで出したプレイヤーはフォローも行います。
 これは、テーブルカードがリードに使われた場合は切り札決定後、そのカードを前に置いていた人(リードしたプレイヤーのパートナー)がそれをリードしたものとして扱われるためです。このリードしたとみなされたプレイヤーはフォローでカードを出せません。

 以上を、上に図示したようにプレイヤーの席を東西南北で表し、南プレイヤーがリードしたとすると、以下のようになります

・手札からリード
 南が手札からリード→西がフォロー→北がフォロー→東がフォロー

・テーブルカードからリード
 南が北のテーブルカードからリード→東がフォロー→南がフォロー→西がフォロー(※北はカードを出さない)

4.フォローのカード制限
 フォローで出すカードは可能であれば必ず、リードで出されたカードと同じスートでなければなりません。例えばハートのカードがリードされたなら、フォローは手札の中のハートのカードから1枚を選んで出します(こうしたルールをトリックテイキングの用語で「スートのマストフォロー」と呼びます)。
 手札に1枚もリードされたカードと同じスートのものがなく、それが不可能な(スートをフォローできない)時にかぎり、手札の中から好きなカードを選んで出すことができます。

5.トリックの終了と判定
 リードとフォローで場に4枚のカードが出されたらトリック終了です。
 場に出たカードに1枚も切り札がない、あるいは切り札なしが宣言されている場合は、りードされたスートと同じスートのカードの中で最も強いカードが勝ちます。リードされたスート以外の、スートをフォローできなかったカードはたとえ強さの順位が高くとも勝つことはできません。

 場に出た切り札が1枚あるならそのカード、複数出ている場合は切り札の中で一番強いカードが勝ちです。
(※前述の【カードの強さ】を参照。同じカードが2枚ある時は先に出されたカードのほうが強いとされます)

 勝ったカードを出したプレイヤーがトリックを取ります。
 トリックを取ったことがわかるように、場に出された4枚のカードすべてを集めて裏向きの山にし、テーブルカードなどとは混じらないように注意して自分の前に置いておきます。この取ったトリックの山は各プレイヤーが何回トリックを取ったかが全員にいつでもわかるように置いておかなければなりません。

 もし勝ったカードがリードで出されたテーブルカードであった時は、トリックを取るのはそのカードを前においていたプレイヤーになります。

6.テーブルカードの補充
 この手順はリードがテーブルカードから出された時にのみ適用されます。
 自分に配られたテーブルカードをリードに使用されたプレイヤーは、手札から好きなカードを1枚選んで表向きに出し、新たなテーブルカードとします。これにより、使われて2枚になっていたこのプレイヤーの前のテーブルカードもまた3枚になり、全員の手札も同枚数となります。

7.次のトリックへ/全トリック終了
 判定が済み、必要に応じてテーブルカードが補充されたら、次のトリックが始まります。
 第2トリック以降は「前回のトリックを取った人」のリードで再びトリックが開始されます。それ以降の手順は上記のとおりです。

 第13トリックが終わると全員の手札がなくなり、各プレイヤーの前に3枚ずつのテーブルカードが残ります。これでプレイは一区切りとなり、得点計算が行われます。
 各人の前に残った3枚のテーブルカードは「ドレッグ(dregs:カス、残滓)」と呼ばれ、得点に影響を与えます。

8.得点計算
 全13回のトリックを終えると、ペアごとの得点が計算されます。
 得点は「最終(第13)トリックを取る」ことと「ペア合計で過半数以上のトリックを取る」ことで加算され、さらにその点数から「ペアの前のドレッグに含まれている切り札の枚数」分の点が減算されることで求められます。

・最終(第13)トリックを取ったペアに4点が与えられる。

・ペアの取ったトリック数を合計し、過半数の7トリック以上を取ったペアには、そのトリック数に応じて下記の点数が与えられる

  7トリック―― 2点
  8トリック―― 5点
  9トリック――10点
  10トリック――20点
  11トリック――10点
  12トリック―― 5点
  13トリック―― 2点


・各人の前に3枚、ペアごとに合わせて6枚残っているテーブルカード(ドレッグ)を見て、そこに切り札が残っているペアは、上記で獲得した点数から残っている切り札1枚につき3点を引く
(例:最終トリック獲得で4点、計9トリック獲得で10点のペアのドレッグに2枚の切り札が残っていたとする。切り札1枚につき3点の減点なので、4+10-[3×2]=8点がこのペアの得点になる)

・ドレッグに残った切り札による減点で得点がマイナスになった場合はゼロ点とする。
(例:最終トリック獲得せず、計8トリック獲得で5点のペアが、ドレッグに2枚の切り札を残していたとする。計算すると、5-[3×2]=マイナス1点となるがマイナス点はゼロとみなすので、このペアの得点はゼロ点である)

・切り札なし(ノートランプ)のプレイだった場合は、ドレッグに残っているA、K、Q、Jのカードを切り札とみなし、それら1枚につき3点が減点される(※スートは問わない)。

9.プレイの継続
 各ペアの得点を記録したら、すべてのカードを集めて新たにプレイを続けます。
 次のプレイでディーラーとなるのは、前回のディーラーの左隣の人です。カードをよくシャッフルして再び手札を配ります。

 こうしてプレイを続けて獲得されたペアごとの得点は累計され、どちらかのペアが以下の【勝利条件】を満たす合計点数に達すると勝敗が決し、ゲームは終了します。

【勝利条件】
 プレイを繰り返し得点を足していき、合計得点が42点以上に達していて、かつ対戦相手のペアに5点もしくはそれより大きく点数が上回ったペアがゲームに勝利します。

 合計得点が42点以上でも、双方の差が5点未満の時はプレイが継続され、その場合はどちらかのペアが「5点以上の差をつけて合計得点が上回る」か「先に合計60ポイントに達する」かで勝利となります。
 両方のペアが同時に計60点以上になった時は点数の高いほうが勝利、それも同点の時はどちらかの点数が相手を上回るまでプレイを続けます。

【エチケット】
 プレイ中はエチケットとして以下の行為が禁じられています。

・ペアのパートナーに対し、自分の手札の中身や、どのカードをリードして欲しいかを、口頭での発言や表情、ジェスチャー、サインなどで伝えてはならない。
(※ただし、何回のトリックが取れるか、取りたいかを発言することは許容される)

・手札が配られた後、全員がプレイに便利なようにそれを整理する(手にしたカードの順番を入れ替えるなどして見やすくする)のを終えるまで、リードしてはならない。

・プレイ中、自分の手札にまだ使用されていない切り札のすべてが揃っている(他のプレイヤーは1枚も持っていない)ことに気づいても、全13トリックが終了するまで「あとのトリックは全部私の勝ちだ」といったような発言をしたり、どうせ勝つ(トリックを取る)ことが確実だからと手札のすべてを場に公開したりといったことをしてはならない。
 これはルール上、カードが他プレイヤーにどう配分されているか完全にはわからなくなっているからこそ、それを予想・予測しながらプレイする楽しみを他人から奪う無作法な行為であり、認められない。


 以上が『フィネス(Finesse™)』のルールです。
 トリックテイキングゲームとして見ると、基本に忠実でことさら奇をてらったようなところは見受けられません。大胆な発想一つを突破口としたデザインではなく、小さな工夫が積み重ねてある感じです。
 得点システムなどからすると、きれいにバランス調整して、プレイヤーのテクニックで配られる手札の運不運を相殺できるようにしよう、といった意図を感じさせられます。加えてテーブルカード(『ブリッジ』になぞらえると、リードのみに限定された特殊なダミー、と言える)を駆使するところが、主な特徴です。
 また、トリック開始前に「全13トリック中、何トリック取れるか?」を予想して宣言するビッドのルールがないタイプのゲームということで、ことさらに「プレイヤーのカードプレイの技術を競う」ことに特化したものとなっています。

 作者のアレン氏はビッドのシステムを導入しなかったことについて、それが意図的なものであることを強調しています。
 ビッドと、その宣言でプレイヤー間の「競り(オークション)」を行うことは、『ブリッジ』がそうであるように大変魅惑的で、奥深いプレイを提供してくれる反面、どうしても初心者が二の足を踏み、そうしたビッドプレイに習熟するにも時間と労力がかかってしまう……ご自身もブリッジ・プレイヤーであるアレン氏は、だからあえて『フィネス(Finesse™)』にはビッドを採用しなかったのだそうです。

 初心者にも優しいビッドなしのルールで、どこまでスキルフルなトリックテイキングが作れるか? という自己設問へのアレン氏流の回答が、このゲームなのでしょう。
 4人限定ペア戦、ということで持ち出す機会がやや難しい面もありますが、その名の通り技巧を尽くしたプレイができるかどうか、ぜひ試してみたいものです。

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The Things 【ルール】

創作トランプ

 ボードゲーム、カードゲームには「正体隠匿系」と呼ばれる作品群があります。
 プレイヤーは自分の帯びている役割・役職、属する陣営などをプレイ中は隠していて、それを悟られないようにうまくプレイし、自分の勝利条件を満たすことが目的になります。

 例として『キャメロットを覆う影』が挙げられるでしょう。プレイヤーは伝説のアーサー王と円卓の騎士に扮してブリテン島に襲い来る闇の勢力と戦いますが、実はゲーム開始時に1人、すでに闇に堕ちた裏切り者が混じっている(可能性がある)のです。裏切り者は正体を隠し、キャメロット城を守るのではなく滅ぼすことを目指して暗躍します。

 もっとわかりやすいのは、いわゆる「人狼ゲーム」と呼ばれる多くの品で、これはテレビでも番組化されたこともあり、普段アナログゲームをプレイしない人でもご存知な方も多いと思います。プレイヤーたちはとある村の村人です。しかしその中にはやはり正体を隠した、夜な夜な人を食い殺すモンスター、人狼が混じっています。ゲームは昼の部と夜の部に分かれ、昼は村人たちが疑わしい人物を投票で選び、処刑します。夜は皆が顔を伏せた中、司会の指示に従い顔を上げた人狼プレイヤーが村人の誰かを選んで殺します。次々にゲームからプレイヤーが脱落していって…果たして生き残るのは村人か、人狼か? というサスペンスなゲームです。ルールによっては村人もまた特殊な能力、風変わりな勝利条件を持つ者がいるなど、推理と駆け引きの幅もいっそう広くなります。

 今回紹介する『The Things(ザ・シングス)』はトランプを使った正体隠匿系ゲームで、その題材をジョン・カーペンターの傑作映画『遊星からの物体X』に得ています。
 映画『物体X』は南極基地の隊員たちによる、奇怪な宇宙生物「物体X(作中、そして原タイトルでは英語でThe Thing)」との絶望的な戦いを描いた作品です。
 物体Xは高度な知性を持つ侵略的なエイリアンで、強力な身体変化と捕食同化・擬態能力を持っています。瞬く間に姿形を変えて生物を襲って食らい尽くすと同時に、その食らった生物へと形を同化させ擬態し、その姿や生前の振る舞いをコピーしてしまいます。すでに仲間の誰かはXかもしれない…人間に擬態したXの正体を見極めるのは容易ではなく、隊員たちはみるみる疑心暗鬼に陥ります。
 しかし、彼らはなんとしても人間に擬態した物体Xを倒さなくてはなりません。Xは細胞レベルで分割・増殖可能な生物で、もし南極よりもはるかに多くの生物、人間がいる場所に解き放てば次々と同族を増やしていき、試算では2万7000時間で全人類を同化し得る、と明らかになったからです。映画のストーリーが進むうちに、南極にいることをよしとしないXがそれを狙って人間に擬態したであろうことも判明します。

 このシチュエーションをゲームのテーマにしたのが本作です。
 参加するプレイヤーの誰かは物体Xですが、その正体は隠されています。人間の隊員と、それに擬態したXが生き残りをかけて戦う、というストーリーを、トランプを使った簡単なルールに落とし込んでいます。
 ただ、このゲームはboardgamegeek.に登録され、2009年にアップロードされたルールが現在もダウンロードできますが、完全なリリース版となるまでテストし切れていないことを作者のケヴァン・デイヴィス(Kevan Davis)氏も認めたままに放置されているようです。
 よって果たしてどこまでうまく動かせるルールなのか、何より面白いのかどうかに若干不安な面もあるのですが…見るかぎりとりあえずプレイは可能のようであり、そのテーマにもそそられるので、紹介することにしました。
 以下のルールはBGGにWitchfinder General氏がアップしたルールPDFから抄訳して記述します。
 また、そのファイルで作者のデイヴィス氏は「攻撃時のペアカードの扱い」「カードの交換」に関してEric Nussberger氏から有益なサジェスチョンがあったことを明記しています。

BGGの登録ページはこちら→http://boardgamegeek.com/boardgame/41173/the-things


【ゲームの概要】
『The Things(ザ・シングス)』は南極基地を舞台とする、人間と物体Xの戦いを描いたゲームです。
 残念なことに、ゲーム開始時点ですでに隊員の誰かはXとなってしまっています。基地の隊員であるプレイヤーは物体Xを駆逐し、この極地から脱出しなくてはなりません。
 擬態した物体Xとなったプレイヤーは、逆にこの場にいる人間を殲滅するのが目的となります。そして南極から文明社会を目指して離脱し、地球を征服するのです。

 隊員の誰がXなのかは、まず最初は配られた手札によって決定され、その後はカードの交換によって新たにXとなる者も現れます。彼(ら)は勝利のために、決定的な瞬間まで人間のふりをし続けるでしょう。
 物体Xとなっているのは誰か? 疑心暗鬼に陥る隊員たちの戦いが始まります。

【勝利条件】
・人間プレイヤー
 すでにXは倒されたと確信したら、人間のプレイヤーは救援の要請を宣言できます。そこでゲームは終了し、本当に生き残った隊員(プレイヤー)全員が人間であれば、人間側の勝利です。
 しかし一人でもXが混じっていた場合は、X側の勝利になります。

・物体Xプレイヤー
 Xとなったプレイヤーは人間を殲滅したと思ったら、南極からの離脱を宣言できます。この場合も生き残り全員がXであればX側の勝利、一人でも人間がいたら人間側の勝利です。

【プレイ人数】
 3人以上
(※テストプレイは主に3人で行われているが、デザイナーの理想としてはそれ以上、5人プレイあたりがベストになれば…とのこと)

【道具と準備】
 ゲームにはジョーカーを抜いたトランプ1組、52枚を使います。
 
 まず開始の準備に1組のトランプから、参加するプレイヤー各人に5枚ずつ配れるように、必要な枚数を取り出します。

 52枚のカードを表側を上にした一つの山にしてよくシャッフルし、上から1枚ずつ確認して黒い(スートがスペードかクラブの)カードであればそれを選び出します。そのようにして、元の52枚から黒いカードを「参加プレイヤーの人数の5倍、そこから1引いた数」の枚数を取り出して、ひとまとめの手札配り用の山とします。3人なら14枚、4人なら19枚、5人なら24枚…の黒いカードの山ができるでしょう。
 次に、作った手札配り用の山に、ハートのクイーンのカードも加えます

 手札配り用の山(何枚かの黒いカードにハートのクイーンを加えた物。プレイヤー3人では計15枚、4人では20枚、5人では25枚)ができたら準備完了です。
 各プレイヤーは場(テーブルなど)を囲むように席につき、ゲームを始めます。

【カードの持つ意味】
・黒いスートのカード=人間用カード
 スート(マーク)がスペード、クラブのカードは人間が物体Xを攻撃するために使うカードです。
 そのうちのキング、クイーン、ジャックの計6枚は「火炎攻撃カード」で、戦闘で特殊な効果を持ち、また手番アクションの「血液テスト」でも使用されます。

・赤いスートのカード=物体X用カード
 スートがハート、ダイヤのカードは物体Xが人間を攻撃するために使うカードです。
 こちらのキング、クイーン、ジャック6枚は「捕食攻撃カード」とされ、やはり戦闘時に特殊な効果をもたらします。

 手札がすべて人間用カード(スペード、クラブ)で構成されているプレイヤーは、人間です。
 もし手札に1枚でも物体X用カード(ハート、ダイヤ)が含まれているなら、そのプレイヤーは物体Xになっています。

・カードのランク
 カードに記されているランク(数値)は戦闘で使われた時の強さを表します。
 数は大きければ大きいほどよく、攻撃にも防御にも効果的です(※ルール原文には明記されておりませんがエースは1と考えるようです)

【初期手札を配る】
 適当にディーラーを決め、ディーラーとなったプレイヤーは手札配り用の山をよくシャッフルして、各人の手札が5枚ずつになるよう裏向きに配ります。残りのカードもシャッフルして、裏向きの山として場の中央に山札として置いておきます。
 全員に手札が配られ各人がその中身を確認したら、ディーラーの左隣の人から手番となってプレイ開始です。以降、ゲームは終了まで時計回りに各人へと手番が移っていき進行します。

 手札配り用の山には1枚だけ物体X用カード(ハートのクイーン)が入っていましたので、そのカードを手札に配られた人は開始時すでにXになっています。
 このゲームは「誰がXか?」を考えながらプレイするのが大事ですので、プレイヤーは他のプレイヤーに手札の中身を終了時まで見せない(言わない)ようにしてください。

【手番の進行】
 手番を迎えたプレイヤーは以下の4つのアクションのうち、どれか1つを選んで実行します。

1.捜索
 より有効な策や武器を求めて基地キャンプ内を調べるアクションです。
 手番プレイヤーは山札の一番上から1枚引いて、自分だけその表側を確認します。
 もしそれが物体X用カード(ハートかダイヤ)であった場合、手番プレイヤーが人間なら即座に裏向きに場に捨てます。それ以外の(引いたカードが人間用だった、あるいは物体X用カードを引いた手番プレイヤーがすでにエックスになっている)時は、先と同様にそのカードを捨てるか、それを手札に入れて別のカードを裏向きに捨てるかを選ぶことができます。

 また、手番プレイヤーが物体Xになっていて、山札から引いたカードと手札を合わせて1枚しか物体Xカードがない場合は、その物体X用カードを捨て札にはできません。そのようにして手札を人間用カード(スペード、クラブ)のみの状態に戻して、物体Xから人間に戻ることは禁止されています。

2.対話
 戦いを有利に運ぶべく、他のプレイヤーと意見を交換します。
 手番プレイヤーは自分の手札から1枚選んでそのランク(数値)を告げ、続けてそのカードと交換したいカードのランクを宣言します。
(例:誰かこっちの「4」と、「6」を交換できる人、いない?)
 交換に応じる人がいるようなら、手番プレイヤーはそのうちの一人を選んで、宣言したとおりに手札と手札を交換します。

 誰も交換に応じない場合は、手番プレイヤーは他のプレイヤーから1名を任意で指名し、強制で交換相手とします。
 指名されたプレイヤーは手札のうち1枚は裏向きに伏せて自分の前に場において保持しておき、手番プレイヤーは相手の手札の残りの4枚から無作為に1枚引いて、自分の手札から選んで宣言していたカードと交換します。交換後、指名されたプレイヤーは伏せておいたカードを自分の手札に戻してください。

 物体Xになっているプレイヤーには、この「対話」でのカード交換に少々制限があります。
 もし手札に1枚しか物体X用カード(ハート、ダイヤ)がない場合、それを交換相手に渡すことはできません。これは自分が手番で「対話」アクションを選んだ場合も、交換に応じた場合も、どちらも同様です。
 また、物体Xプレイヤーは強制交換に指名された時には、手札に何枚の物体Xカードがあるかにかかわらず、場に伏せておくカードは物体X用カードでなければなりません
(※これらの制限により、物体Xとなってしまったプレイヤーは人間に戻ることはない、ということになります!)

 カード交換の宣言、受け渡しではカードのランク(数値)について嘘をついてはいけません。交換する際にやり取りされる情報はランクだけで、スート(マーク)について公開する必要がないことに注意してください。
 ゲームが進行すると、後述する「攻撃」で起きる戦闘の結果、脱落するプレイヤーも出てきます。
 戦闘で死亡したと判定され脱落したプレイヤーは当然ですが、もはやカード交換に応じることはできません。

3.血液テスト
 誰がXか? 同化・擬態能力を持つ物体Xの存在を特定するため、隊員の血液を検査します。
 手番プレイヤーは手札から火炎攻撃カード(スペードかクラブ)を出して他のプレイヤーたちに見せた後、それをそのまま場に裏向きで捨て札し、テストする他のプレイヤーを指名します。そして、指名したプレイヤーの手札から1枚を無作為に引き、自分だけその表側を確認して相手に返却します。
 手番プレイヤー以外の人は、引いたカードを見てはいけません。

4.攻撃
 隊員はXだと目星をつけた相手を倒すべく、あるいは物体Xであれば満を持して人間を打ち負かそうと攻撃を仕掛け、戦闘が始まります。これは命がけの戦いです。
 手番プレイヤーは攻撃を仕掛ける相手を指名し、手札から好きな枚数のカードを表向きに場に出します。この時、他のプレイヤーもこの攻撃に同調するなら、その旨を他プレイヤーに伝え同じく好きな枚数のカードを手札から場に出します。
 指名されたプレイヤーは防戦するため、やはり同様に手札から何枚かカードを選んで出します。他のプレイヤーで防戦側に与したい者も、そのように宣言してカードを好きな枚数出すことができます。

 物体Xとなっているプレイヤーは手札を出し切ることはできず、必ず1枚は物体X用カード(ハートかダイヤ)を残しておかなければなりません
 また、どのプレイヤーも手札から火炎攻撃カードもしくは捕食攻撃カード(キング、クイーン、ジャック)を出す時は、どちらか一方しか出せず、たとえプレイヤーが物体Xで両方を手札に持っていたとしても併用することはできません(例えば、手札にハートのクイーン、クラブのキングがあったとしても、どちらかしか出せない)。

 防戦側がカードを出し終えたら、次は攻撃側が、さらにその後にまた防戦側が…と攻撃・防戦と二手に分かれて、カードを可能なかぎり望むまで出し続けることができます。
 プレイヤー全員がカードを出すのをやめたら(あるいは出せなくなったら)、このアクションは終わり、戦闘の結果が判定されます。

【戦闘とその結果】
1.通常の戦闘判定
「攻撃」のアクションが選択され、カードが出し終えられたら、その結果を判定します。
 基本的には出されたカードのランク(数値)を攻撃側、防戦側それぞれで合計し、その数を双方の攻撃力として比べることになりますが、それには以下の特別ルールが゜あります。

・一人のプレイヤーが同じランクのカード2枚を出した場合、その2枚は「カードのランクの3倍」と数えて攻撃力に加算します。例えばあるプレイヤーがスペードとクラブの6を出したなら、その2枚は攻撃力を計算するときには18とみなされます(6×3=18)。

・物体Xプレイヤーなら手札にハートとダイヤのカードも混在するため、同じランクのカード3枚もしくは4枚を出すことも可能です。この場合、3枚であれば「ランクの4倍」、4枚であれば「ランクの5倍」とみなして攻撃力に加算されます。例えばスペードとハートとダイヤの5をあるプレイヤーが出したら、攻撃力に加算されるのは20です。

 上の特別ルールも適用して攻撃側と防戦側の攻撃力を求めて両者を比較し、攻撃側の数が防戦側より大きければ攻撃側が勝ち、攻撃対象として指名されたプレイヤーは死亡したこととなりゲームから脱落します。防戦側の攻撃力が攻撃側と同じか、それより大きい時は何も起こりません。

2.火炎/捕食攻撃の判定
 もし戦闘でプレイヤーの誰かから1枚でも火炎、もしくは捕食攻撃カードが出されたら、判定にカードのランクは一切関係がなくなり、単純に双方の「火炎/捕食カードの枚数」を比較することになります。

 攻撃側の枚数がより多ければ、攻撃対象に指名されたプレイヤーは死亡し脱落します。
 防戦側と枚数が同じ、あるいは防戦側のほうが多い場合は、「攻撃」を仕掛けた手番プレイヤーが反撃にあって死亡、脱落することになります。

 以上、「1.」と「2.」どちらの判定でも、攻撃されて死亡、脱落したプレイヤーはすべての手札を裏向きで場に捨て、以降はゲームに参加できなくなります。脱落したプレイヤーはゲーム終了まで自分が人間だったのか、それともXだったのかを他のプレイヤーに伝えてはいけません

【補充】
 アクションが終わったら、手番プレイヤーから順に時計回りで、まだ脱落していないプレイヤーは手札が再び5枚になるように山札の上から引いていきます。
 この時、人間のプレイヤーが物体X用カード(ハート、ダイヤ)を引いたら、即座にそのカードを他のプレイヤーたちに見せ、その後場に裏向きに捨てて、山札から新たに引き直します。
 物体Xプレイヤーが物体X用カードを引いた場合は、そのまま手札に入れるか、人間プレイヤーと同様にいったん公開して、場に裏向きに捨てるかのどちらかを選択できます。

 山札がなくなったら、捨札を集めてよくシャッフルし、これを新たな山札としてゲームを進めてください。

 全員の手札が5枚に戻ったら手番が左隣のプレイヤー(脱落したプレイヤーは飛ばす)に移り、ゲームの終了まで上記の手順を繰り返します。

【ゲームの終了】
 ゲーム終了のタイミングは、プレイヤーの決断と宣言によります。
 これには以下の二通りがあり、そこで人間か物体Xか、勝敗が決します。

1.救援要請
 人間プレイヤーはゲーム中にいつでも、救援機の出動を無線で要請する決断を下し宣言できます。
 これを宣言したプレイヤーは自分が人間であることを示すためすべての手札を場に表向きに出し、他のプレイヤーも同様に手札を公開します。
 生き残りのプレイヤー全員が人間であれば、人間の勝利です。もしその中に1人でも物体Xがいたら、Xが文明社会に解き放たれることとなり、物体Xの勝利となります。

2.南極からの離脱
 物体Xとなっているプレイヤーはゲーム中にいつでも、密かに建造した空飛ぶ円盤に乗り、この極地から離脱して文明社会を目指すことを決断し、宣言できます。
 これを宣言した場合も上と同じくすべてのプレイヤーは手札を公開することとなり、生き残りの全員がXであれば、物体Xの勝利です。もしその中に1人でも人間がいたら、彼(彼女)は円盤の操縦をサボタージュし破壊、離脱を阻止してしまいます。そうなればXは極寒の南極に封じられ、人間が勝利します。
(※特に明記はないのですが、途中で脱落したプレイヤーもまた人間だったか物体Xだったかで勝利、もしくは敗北とされるようで、脱落したプレイヤーは問答無用で負けというわけではないようです)

【カードの交換について】
 以上で公開されてるルールの紹介は終わりですが、作者が提案している手番アクション「対話」でのバリエーションについて触れておきます。
 このゲームはテストプレイ進行中にルール更新が停止した状態のため、ルールが煮詰めきれていません。作者は「対話」時の交換について、もう少し宣言の仕方を制限のゆるやかなものにしてもよいのではないかと考えていたようです。

・「対話」を選択した手番プレイヤーは自分の欲しいカードのランクを告げ、さらにどのランクのカードとなら交換できるかを宣言する。
(例:5のカードが欲しいんだけど、2か3と交換しない?)

 この作者曰く「カタンの開拓者的スタイル」を採用すると、カード交換はより交渉の余地が生まれるようにも思われます。お好みでこのバリエーションを使ってみてもよいでしょう。


 この『The things(ザ・シングス)』、原作フィクションのあるテーマを扱うには少々ビジュアルリソースに乏しいトランプゲームとしては、かなり頑張って元の映画の要素を盛り込んでいます。
 仲間の誰かが実は敵というサスペンス要素がなくては『物体X』じゃないだろう、というのは無論のこと、映画をご覧になった方には申すまでもなく、ルールに登場するアクションは基本的に映画のイメージに則っており、例えば「血液テスト」は作中で重要な、Xを識別するための決定打となる要素になっていました(それに比べるとこのゲームの場合はテストの精度が落ちていますが)。物体Xが離脱に用いる空飛ぶ円盤も映画に登場するアイテムです。
 他にもゲームメカニズムのベースにあるトランプのスートの色、赤と黒でXの増殖を表現する、というアイデアには光るものを感じます。

 この記事の最初に述べたように、このゲームはやや未完成な状態です。
 おおまかに見て不安を感じる箇所としては、物体Xプレイヤーが仲間を増やす手段が「対話」アクションでのカード交換しかありえず、果たしてこれがちゃんとゲームとして機能するか、といったことが挙げられます。逆に人間プレイヤーが「対話」を選択するメリットに乏しそうだということも考えられますね。
 さらに言うと、プレイ人数が3人はともかく、それ以上に関してテスト不足というのも気になります。

 実はBGGのフォーラムではBehrooz Shahriari氏がこのゲームのハウスルールについて投稿しているのですが…氏はかなり継続してこのゲームをテストし、一定の評価が得られるハウスルールを仲間うちで採用していたようなのですが、如何せん、ご本人の記憶が曖昧になってしまったようで、記述の歯切れが悪く、迷ったのですが本ブログのルール紹介にはそれらを取り入れることを見合わせました。
 うかつにルールの記述に取り入れると、情報が錯綜して把握しづらいものになりそうだったからです。
 しかし、Shahriari氏の提案するハウスルールは、

・「対話」のアクションで応じるものが現れなかった場合は、手番プレイヤーは「捜索」のアクション(山札をドロー)して手番を終える。
・参加プレイヤーが4人、もしくは5人以上の時は使用するトランプを2組(104枚)にする。
・4人、もしくは5人(あるいはそれ以上)の時は最初の手札配り用のカードに入れる物体X用カードをハートのクイーンだけでなく、さらにもう1枚(あるいはそれ以上)加える。
・「捜索」アクションの捨て札のみ、表向きに捨てる。捨て札は裏向きのものと表向きのもの2つに分けておき、山札がなくなったら両方を合わせてシャッフルし新たな山札にする。
・「攻撃」によって起きる戦闘時に、火炎/捕食攻撃カードは影響しない(※明記されていないが戦闘は通常判定のみ、火炎/捕食カードのキング、クイーン、ジャックはそれぞれ13、12、11とランクを数えると思われる)。

 といった検討の余地のある記述が盛り込まれているので、興味のある方は参照してみるとよいでしょう(Shahriari氏のフォーラム記事はこちら→http://boardgamegeek.com/thread/397141/house-rules-recovery-in-progress

 最後に、このゲームと同じく映画『物体X』を扱った、というよりも間違いなく原作としているゲームがBGGに登録されているのも紹介しておきます。
 その『The thing』(とその拡張セット『The things』)は映画のスクリーンショットを使用したオリジナルカードとダイスを使うゲームで、フリーゲームとして発表されたものとしては評価が高く、BGGのP&P(プリント&プレイ、印刷して自作)ゲームの2011年ゴールドアワードを受賞しています。
 元はフリーで現在でもルールの入手、カードの自作が可能ですが、好評を得てカードセットが販売されており、今やフリーゲームというより立派な市販ゲームといえるでしょう(ですので、本ブログではルールの抄訳や紹介をしません)。

基本セット『The thing』のBGG登録ページはこちら→http://boardgamegeek.com/boardgame/75828/the-thing
拡張セット『The things』のBGG登録ページはこちら→http://boardgamegeek.com/boardgameexpansion/76741/the-things

 映画『物体X』のシーンをあしらったカードを見れば、欲しくなる人もきっと多いのではないでしょうか。

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BushiShogi 【ルール】

アブストラクトバリアント

チェス2000年の歴史の中で、この系統に属するゲームが表すのは常に、王たちの戦いだった。
 シャトランガ(※チェスゲームの源流とされる)がインドからペルシャ、ヨーロッパへと広がったのと時を同じく、それは中国、そして韓国から日本へと伝わった。将棋となったそれは巨大な25×25の盤と幾百の駒を持ったが、その数百年後には9×9の盤へと標準化された。そして現在、すべての将棋バリアントは、より小さな新しい形を模索している。
 ここにいたり、私はチェスについての冒頭の思索に再び戻った――そのバリアントには、王と王個人の、あるいは鍛錬を積んだサムライ同士の戦いのみがある


 フィンランド人のGeorg Dunkel(ゲオルク・ドゥンケル)氏はチェス、そして将棋の相当な愛好家らしく、ご本人のWebページを見ると、十五世名人・大山康晴の発明とされるマイクロ将棋(五分摩訶将棋)を紹介し「ヘルシンキE-mailトーナメント」と銘打った電子メール戦を主催していたようです。
(※彼のSMALL SHOGI VARIANTSのページはこちら。トップベージはリンクが切れて見当たらず、トーナメントも2002年以降は更新されていない模様)

 Dunkel氏はマイクロ将棋の紹介のみならず、独自の駒とルールを用いた将棋バリアントを幾つか発表しており、それらはboardgamegeekにも登録されています。
 彼の将棋バリアントはどれも盤は9×9よりずっと小さく、駒の種類・数も少ない、ご自身が親炙するマイクロ将棋の影響がうかがえるものです。しかもただ小型化したというだけではなく、普通の将棋には存在しない駒とその動き、ルールも「動かすたびに成って別の駒に変化する」とか「指し手双方が動かすことのできる中立駒がある」といった、伝統ゲームのバリアントというよりも、新作ゲームと考えたほうがいいような独自の方向性を持っています。

『武士将棋(BushiShogi)』は、そんなDunkel氏の小さな将棋バリアントの中でも、最小のものです。おそらく氏の意図するところを汲めば「世界最小の将棋バリアント」ではないでしょうか。
 盤はタテ2×ヨコ1の2マス、駒は互いに1つずつの2個。
 指し手はルールでは便宜上、チェスのように白プレイヤー、黒プレイヤーと呼称されますが、駒に色分けはなく、どちらも同じ形の、各面に「武士」「刀」と描かれた立方体を向かい合わせに置きあって対局します。

bushi1.jpg
(※作者による『武士将棋』自作例。駒の各面には「武士」の字の代わりに赤い三角、「刀」の代わりに緑の丸が打たれている)

 2×1マスの盤は、駒を向かい合わせに置くだけでプレイ可能なゲームなので、実際のところ必要はありません。作者は「ボードゲームなのにボードがないのは想像できない」から、とあえて要不要に関係なく使用しているようです。また、あくまでこれが「最小の将棋バリアント」であることを主張するための、ウィットもまじえたこだわりでもあるのでしょう。
 盤はなくていい、といってもサイコロのような特殊な駒は自作が必要で、ルールを読めばすぐできるというわけにはいかないのですが、それも簡単な工作で済みますし、このフィンランドからやってきた将棋バリアント(?)『武士将棋』の指し方を紹介したいと思います。

 ルールは作者が2000年にWeb公開したバーション1.0を基に解説し、必要箇所では説明用の図も引用します→http://www.kolumbus.fi/geodun/bushi/bushi.htm


【ゲームの概要/勝利条件】
 この将棋は武士、サムライ同士の対決を描きます。
 指し手は交互に自分の駒を動かし、自分の手番に駒が「詰み」の形になるように動かしたほうが勝利します。

【道具とその準備】
 白黒2(タテ2×ヨコ1)マスの盤。武士駒2つ。
(※盤はなくてもプレイ可能です)

●武士駒の作り方
 駒はサイコロのような立方体で、各面に「武士」「刀」の文字が規則的に入ります。
 以下の展開図を参考に、印刷したものをお手持ちのサイコロ等に貼り付けたり、紙で作ったサイコロに図のとおりになるよう書き込んだりして作成してください。ゲームには各プレイヤー1つずつ、同じ物が計2個必要になります。

〈駒の展開図〉
展開図

【駒各面の種類と向き】
 盤に置かれた武士駒の状態、向きは立方体の上面に描かれている漢字で判断します。
 駒各面に描かれた漢字の形は「左構え」「右構え」「正面打ち」「三方払い」の4種、向きはその駒の持ち主から見て「前(正面)向き」「後ろ(手前)向き」「左向き」「右向き」の4方向です。漢字「武士」の位置で向きが決まり、駒が対局中に斜め向きになることはありません。

○駒各面の種類
駒種類

○駒の向き
駒向き

【詰みの形】
 この将棋の対局では2つの駒同士を向かい合わせに盤に起きますが、駒が互いに「前(正面)向き」で向き合い、かつ上面が両方ともに「正面打ち」か「三方払い」のどちらかの状態になると、対局は「詰み」となって終了します。
 自分の手番にこの詰みの形にしたほうの指し手が対局に勝利します。

詰み型
 上図では「正面打ち」の駒同士で積んだ形になっていますが、これの片方、もしくは両方が「前(正面)向き」の「三方払い」の駒であっても同様に詰みです。

【対局の流れ】
1.先手後手の決定
 指し手2名が対面に席に着いたら、適当な方法でどちらが白でどちらが黒かを決めます。
 黒の指し手が先手、白の指し手が後手です。
 両者の間のテーブルなどの場に、盤をそれぞれのマス色(黒は黒マス、白は白マス)が手前になるよう設置します(※盤がなければ、これは飛ばして次の手順2.に移ります)。

2.駒の初期配置
 最初は盤上に駒が置かれていない状態で対局が開始されます。
 まず先手(黒)が自分の武士駒を、好きな面を上に、好きな向きで、手前にある自分の色のマスに置きます。続けて同様に後手(白)もマスに自分の駒を置きます。

○初期配置の禁じ手
 どの面をどの向きでも置くことができますが、例外として相手に刀が向いた状態で開始するのは禁止です。
 自分の駒上面を見て、「刀」の字が上辺の位置に書かれている配置で駒を置くことはできません。例えば「正面打ち」の駒を前向き、「左構え」の駒を右向きに置く、といった置き方を初期配置では選べないのです。上面を「三方払い」にした場合では、向きは後ろ向きにしか配置できないことになります。
 これは一番最初に互いの駒を置くときだけの制限です。

3.駒を動かす
 以降、先手(黒)から始めて、次に後手(白)と交互に手番をむかえては、詰みの形になって勝敗が決するまで自分の駒を一手ずつ動かしていきます。
 パスはありませんので、手番には必ず駒を動かします。

【駒の動かし方:基本】
 手番がきて駒を動かす時は以下の4つの動かし方のいずれかを選んで動かします。
『武士将棋』では駒はマスを移動することはなく、各駒の向きが変わったり、面が入れ替わったりすることで動きます。

1.向きを変える
 駒の上面はそのままに、右に90度、時計回りに旋回して向きを変えます。
 向きを変えられるのは右90度にのみです。左旋回などはできません。

向き変更
 上図の例では「正面打ち」前向きの駒の向きを変え、「正面打ち」右向きの配置になりました。

2.前方回転
 駒を前方に90度転がします。それまでの上面は奥に、手前にあった面が新たな上面になります。

前回転
「三方払い」前向きの駒を前方に転がし、それまで手前にあった「正面打ち」の面が後ろ向きで配置されました。

3.左回転
 駒を左に90度転がします。それまでの上面は左側面に、右側面にあった面が新たな上面になります。

左回転
「三方払い」前向きの駒を今度は左に転がしました。右側面にあった「右構え」の面が左向きで配置されます。

4.右回転
 駒を右に90度転がします。それまでの上面は右側面に、左側面にあった面が新たな上面になります。

右回転
「三方払い」前向きの駒を右に転がした場合です。左側面にあった「左構え」の駒が左向きで配置されます。

 駒の動きは以上の通りで、右90度以外に向きを変えたり、手前に向けて転がすことはできません。

【駒の動かし方:特殊な制限】
 手番がきて駒を動かすときに、相手の刀が自分に向けられている(相手の駒の「刀」が相手から見て上面の上辺に位置している)場合は、駒の動きに制限を受けます。
 これには二通りの場合があり、以下のやり方で手番の指し手は駒を動かさなくてはなりません。

1.自分の刀は相手に向いていない
 相手の刀は自分に向いていて、自分の刀は相手に向いていない(上辺に「刀」がない)場合は、この手番は右に90度旋回して向きを変えることしかできません。

特殊1
 上図の状態で白の手番とします。黒が「右構え」左向きで刀を向けているのに対し、白は「右構え」右向きで相手に刀が向いていません。よって白はこの手番に駒を右旋回させ、「右構え」後ろ向きにして手番終了です。

2.両者ともに刀を向けている
 相手も自分も刀を相手に向けている(双方の上辺に「刀」がある)場合は、手番の指し手は自分の駒が今向いている方向に駒を90度転がすことしかできません。

特殊2
 今度は黒の手番です。黒は「右構え」左向き、白は「左構え」右向きで双方が刀を向け合っています。手番の黒は駒を左に90度転がし、今の上面は左側面に、それまでの右側面が上面となって手番終了です。

【細則:盤の位置と対局姿勢】
 作者はもともと、盤を対局者の間にまっすぐタテに置き、対局中の指し手は自分の駒の上面と手前面、相手の上面と奥面の計4面しか見ないで指すことを想定しています。
 しかしそれと同時に、ちょっと頭を傾けたりすれば互いの駒の側面を見る(見えてしまう)ものだ、ということも承知しており、その解消と難易度の調整も兼ねて、対局に慣れるまでは「盤を指し手双方から見て右斜め45度傾けて」指すことを推奨しています(記事上部で紹介した作者の作例の写真がそのようになっています)。
 そうすることで指し手は、自分の駒の上面と手前面と右側面、相手駒の上面と奥面と左側面の計6面をを確認しながら対局できることになります。


 というわけで、僕も『武士将棋』を自作してみました。
 僕は絶望的に字が汚く、絵も描けませんのでフリーハンドで漢字を書くとまったくやる気の起きない(誰も対局に付き合ってくれない)シロモノと化すのが容易に想像できましたので(笑)、画像ソフトの力を借り、ついでに河鍋暁斎の屏風絵から竜と虎を拝借しました。

DSCI0800.jpg

 友人と対局してみましたが、この『武士将棋』を将棋とするのは微妙なところがあります。なるほどと思える点も多々あるにせよ、単純といえば単純、コンピュータなどにかかれば瞬く間に解析されてしまうことでしょう。
 ですが、いざ指して見ると「人間は立体物に描かれ回転する図像の配置を意外なほど記憶できない」ということを思い知ったりします。また、お茶やコーヒー、お酒を片手にこういったものをカタカタと動かすのは、それだけでも楽しいものです。

 作者のDunkel氏はBGGのフォーラムなどで「これのどこが将棋?」といったツッコミが入るのも(実際に入っています)、端から織り込み済みだったのでしょう。
 ルール紹介のページには「この『武士将棋』をシリアスにとらないで欲しい」と書かれています。そしてそれに続けて、このバリアントの着想は、彼の言葉では「哲学的」な思索から得られたものだと解説しています。その哲学的な思索というのが、この記事の冒頭に掲げた引用部分です。
 巨大な構成を持つボードゲームから小さくなり、さらに小さく斬新なバリアントへ。
 王の率いる陣営同士の戦いから、サムライ同士の個の対決へ。
 Dunkel氏は『武士将棋』の構想を練る最中に、さらに要素を50パーセント削減し、1マスの盤、1個の駒を互いに動かすゲームも検討したといいます。

 より小さく、より少なく。
 フィンランドの将棋愛好家による愛らしい将棋バリアント、少しばかり図画工作が必要ですが、お試しいただければと思います。

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Bhabhi 【ルール】

伝統トランプ

 花札はもともと南蛮渡来のトランプ(スート4種で各12枚、計48枚)だったものが、博打の禁令などを逃れるため、そしておそらく日本人の美意識もあって姿を変えていき、現在の形(12ヶ月で各4枚、計48枚)になったそうで、そのためかヨーロッパで遊ばれていたトランプゲームの中でも、渡来した南蛮人が伝えたのであろうカシノ系(このブログで前回紹介したフィッシングゲームのThree kingsもこのジャンル)に近い、札ごとや数枚セットの役に得点が決められていて、それを取った(集めた)合計得点を競う遊び方が多いようです。

 その一方で、日本では花札ならぬトランプのゲームというと得点計算を必要としない、配られた手札を早くなくした人が勝ち、というルールのものが広く遊ばれている気がします。『ババ抜き(オールドメイド)』や『七並べ(ファンタン)』がそうですし、有名な『大富豪(大貧民)』などまさにそれですね。そうした「手札を早くなくす」ことが勝利条件となるゲームで、特に『大富豪』のようなゲームはしばしば「ストップ(Stop)」あるいは「シェディング(Shedding)」ゲームと分類されます。

『バビ(Bhabhi)』は東インドに起源を持つシェディングゲームだとboardgamegeekに紹介されています(登録ページはこちら)。
 世界中のトランプゲームを集めているPagat.comや、デビット・パーレット氏の著書『The Penguin Book of Card Games』には少なくとも同名のゲームは見当たらず、それがいつ頃から存在するゲームなのかなど来歴に不鮮明な部分も多少あるものの、BGGのフォーラムでマーク・クラッセン(Mark Klassen)氏がルールを記載しています。
 またリンクの項を見るとi-phoneアプリのダウンロードページに加え、モー・シン(Moe Singh)氏のwww.bhabhi.orgがあり、こちらにはルールと、さらにコンピュータ相手の対戦プログラムも設置されていました。来歴不鮮明、とは書きましたが、このMoe氏がどうやらインド系の方のようだということも考慮すると、このゲームをインド発祥とする記述はおそらく正しいと思われます。

org.png
(※コンピュータ対戦は3~6人プレイ対応。ただしコンピュータの思考はランダムで今一つと作者のSingh氏も記しています。オンライン対人プレイは現在ベータ版のようです)

 今回はこの興味深いインド発のトランプゲームを紹介したいと思います。
 ルールはBGGのフォーラムにKlassen氏が記したものをベースに、www.bhabhi.orgの記述も参照しました。

 BGGのフォーラムのスレッドはこちら→http://boardgamegeek.com/thread/471299/the-perfect-card-game
 www.bhabhi.orgはこちら→http://www.bhabhi.org/

【ゲームの概要】
 配られた手札をすべて場に出し、他のプレイヤーよりも早くなくすことがゲームの目的です。
 手札がゼロ枚になった(出し切った)プレイヤーはゲームに勝って抜けていき、最後に残ったプレイヤーが敗者となります。この敗者のことを「バビ」と呼びます

【プレイ人数】
 2人~7人。
 ただしwww.bhabhi.orgのMoe Singh氏は「2人から可能だが楽しめるのは3人以上」と記しており、BGGの登録ページでも3~7人プレイ可、最適人数は4~5人だとされています。

【使用する道具】
 ジョーカー抜きのトランプ1組(52枚)

【カードの強さ】
 このゲームでは出したカードの強さを比べることが重要なルールになっています。
 カードの強弱は描かれているランク(数値)で判断され、強い順に、

〈強い〉A→K→Q→J→10→9→8→7→6→5→4→3→2〈弱い〉

 となっています。最強のカードはAで、最弱は2です。

【プレイの準備】
 カードを出す場(テーブルなど)を囲んでプレイヤー全員が席についたら、適当な方法でディーラーを決め、ディーラーはすべてのトランプをよくシャッフルし、裏向きに1枚ずつ各プレイヤーに配ります。
 配る順番はまずディーラー本人、次にその左隣、さらにその左隣と時計回りに1枚ずつ、52枚のカードすべてを配り切るまで配っていきます。
 4人プレイならば各人に13枚ずつ均等に配られますが、他の人数では配られる枚数が1枚多い人も出てきます。このゲームではそれでOKです。例えば5人プレイだとディーラーとその左隣は11枚、他の3人は10枚となります。
 ディーラーが配り終えたら、各プレイヤーは配られたカードの中身(表側)をそれぞれ確認します。これがプレイヤー各人の手札になります。

 手札を確認してスペードのAを持っている人が最初の手番プレイヤーです。
 以降ゲームは手番ごとに各プレイヤーが1枚ずつカードを手札から出し、全員が出し終えたら場に出されたカードの強さを比べる、という「ラウンド」を敗者が決まるまで何回も繰り返していきます。
(※全員がカードを出す前にラウンドが終了することもあります。以下の【ラウンドの進行】「3.フォローできない時」のルールを参照してください)

【ラウンドの進行】
1.カードをリードする
 初回の第1ラウンドはスペードのAを持つプレイヤーが最初の手番プレイヤーとして、そのスペードのAを場に表向きに出すことで開始されます。
 この、各ラウンド最初のカードを出すことを「リード」、出されたカードを「リードカード」と呼びます。

2.カードをフォローする
 そして手番は左隣へと順に移っていき、全員が手番ごとに1枚ずつカードを手札から表向きで出していくことになりますが、以降の手番プレイヤーはリードカードのスート(マーク:)と同じスートのカードを出さなくてはなりません
 つまり第1ラウンドではスペードのAがリードカードですので、ラウンド始めにリードしたプレイヤー以外の各人は、自分に手番が回ってきたら手札の中のスペードのカードから1枚を選び場に表向きに出すことになります。
 リードカードと同じスートのカードを出すことを「フォロー」と呼びます。

 このようにリード、そしてフォローでプレイヤー全員が1枚ずつカードを場に出した(手番が一巡した)ら、そのラウンドは終了です。

3.フォローできない時
 リード後に手番が回ってきたプレイヤーが、リードカードと同じスート(第1ラウンドではスペード)のカードを手札に持っていないとフォローはできません。
 フォローできないプレイヤーは手札から好きなカードを表向きに出すことができ、そこで即座にラウンドは終了します。
 例えば、4人でプレイしていて最初のプレイヤーがリード、次にその左隣のプレイヤーがフォローできずにリードカードとは違うスートのカードを出した場合、残り2人のプレイヤーに手番は回らず、場には2枚のカードが出てラウンド終了となります。

【ラウンド終了後の判定】
 リードとフォローで全員が1枚ずつ場に出すか、誰かがフォローできずに1枚出すかでラウンドが終了したら、その結果を判定します。
 判定にはカードの強さが関係しますが、それは以下の2通りがあります。

1.リードに対して他の全員がフォローできた場合
 場には人数分の同じスート(第1ラウンドではスペード)のカードが並んでいるはずです。
 それらのカードの強さを比べて、もっとも強いカードを出したプレイヤーが、次のラウンドで最初に手番をむかえリードするプレイヤーとなります。
 判定がすんだら場のカードはすべて捨て札となって、1つにまとめて裏向きの山にしゲームから除外します。

2.誰かがフォローできずに終了した場合
 この場合も場のカードの強さを比べますが、対象となるのはリードカードと、リードカードのスートと同じスートのカードだけです(※つまりフォローできなかったカードは判定に考慮されない)。
 対象となるカードの中で一番強いカードを出したプレイヤーが次のラウンドでリードを行うことになるのは上記の「1.」と同様ですが、判定後、場のカードはすべて、そのプレイヤーの手札となります

 例えば、Aでリード、その次のプレイヤーはQ、そしてその次のプレイヤーが8を出し、ラウンドが終了したとします。
 このケースではAをリードしたプレイヤーが、自分の出したカードも含めた場の3枚を手札に入れ、次のラウンドのリードを行うことになります。

 Aでリード、そして次の手番プレイヤーが8を出してラウンドが終了した場合はどうでしょう?
 この時もAをリードしたプレイヤーが、Aと8の2枚を手札に入れることになります(※「リードカードとそれと同じスートのカードの中で一番強い」が判定の条件なので)。

【第2ラウンド以降のプレイ】
 判定後、手札のなくなったプレイヤーは「勝ち」でゲームから抜けます
 まだゲームから抜けていないプレイヤー全員で第2、第3……と新たなラウンドを開始し繰り返していきます。
 第2ラウンド以降は、先の判定の結果で決まったプレイヤーのリードから始まりますが、これ以降リードカードはそのプレイヤーの手札から好きなものを出すことができます。スペードだけでなくハート、ダイヤ、クラブのどのスートでも、描かれているランクにも制限はありません。
 もし次のラウンドでリードすると決定したプレイヤーがゲームから抜けていたら、その左隣でまだゲームに残っているプレイヤーが最初に手番をむかえリードします。
 それ以外のラウンドの流れは上記に準じます。

【ゲームの終了】
 ラウンドを繰り返してプレイヤーが抜けていき、最後の一人が残ったらゲームは終了です。
 この最後に残ったプレイヤーが「バビ」、敗者となります。

【スペシャルルール】
 以下はMark Klassen氏がご自身のプレイ環境で用い、推奨している追加ルールです。
 任意にどれか、あるいはすべて導入してプレイしてみるのもよいでしょう。

1.第1ラウンドの特別ルール
 一番最初の第1ラウンドのみ、フォローできないプレイヤーが出ても全員が1枚ずつ場に出すまでラウンドを続けます。
 カードの出し方に変更はなく(可能であれば必ずフォローする)、判定方法は「誰かがフォローできずに終了した場合」と同様ですが、場に出たカードはすべて捨て札となります
(※最初に配られる手札の運、不運の印象を軽減するための措置のようです)

2.他プレイヤーの手札を受け取る
 各プレイヤーはラウンドが終了し判定結果も適用された後、次のラウンドのリードカードが出る前であれば、自分の左隣のプレイヤーの手札をすべて受け取り、自分の手札に入れることができます。
(※そのようなプレイをしたがる人はあまりいないと思いますが、最初の第1ラウンドの場合は手札が配られた後、スペードのAが場に出る前のタイミングであれば、このルールで手札の受け取りを左隣の人に要求できることになるでしょう)
 受け取りを要求されたプレイヤーは、すべての手札を相手に渡し、その時点でただちに「勝ち」となってゲームから抜けます。望むのであれば1人のプレイヤーが左隣から手札を受け取った後、さらに続けてまた新たな左隣から受け取り…と連続して手札を受け取ることも可能です。
 リードする予定だったプレイヤーが手札を渡して「勝ち」となりゲームから抜けてしまった場合はどうするのか、ルールに明記はされていませんが、【第2ラウンド以降のプレイ】に書いたように「その左隣のプレイヤーがリードする」でかまわないと思います。これがもし第1ラウンド開始前に起きた場合は、手札を受け取ったプレイヤーがスペードのAを持っているはずですから、そのプレイヤーがリードします。
(※Klassen氏はこれを適切なタイミングで行うことにより、本来なら敗者となる状態だったプレイヤーが他より先に勝って抜けるのを何度も見ているそうです。またwww.bhabhi.orgのSingh氏も自分の望むカードを手札に入れるためのテクニックとしてこのルールの採用を推奨しているのですが、彼の記述では要求できるのは左隣に限らず「他のプレイヤーの誰でも」から手札を受け取れる、としています)

3.ラウンド終了前の特別ルール
 誰かがフォローできずに1枚カードを出すと即座にラウンド終了ですが、このルールではフォローできなかったプレイヤーの左隣で、次に手番が回ってくるはずだったプレイヤーに限り、カードを出すことができます(そしてそこでラウンドが終了します)。出すか、出さないかはそのプレイヤーの任意です。
 このルールでカードを出したプレイヤーは、判定の結果にかかわらず場にされたすべてのカードを手札に入れ、次のラウンドのリードを行います
(※このルールで出せるカードには制限があるのか、Klassen氏は明記していません。いちおうここでは基本のルール通り「リードカードのスートをフォローできるならしなくてはならない。できないなら好きなカードを出す」としておきます)

4.シュートアウト!
 ゲームに2人のプレイヤーが残り、一方のプレイヤーが手札の最後の1枚をリード、もしくはフォローで場に出し、相手も同じスートのカードを場に出しているなら、基本ルールではどちらのカードが強いかにかかわらず、この2枚は捨て札となってゲームは終了します(※最後の1枚を片方のプレイヤーは出しているので)。

 しかしこのルールを採用してのプレイでは、りプレイヤー2人の状態で最後の1枚として出されたカードが、相手の出した同スートのカードよりも強い時には、敗者を决定するための「シュートアウト」が行われます。
 このルールでも、出された2枚のカードが捨て札となるのは基本ルールと同じですが、強いカードを出した(そして手札はもうなくなっている)プレイヤーは手札の代わりに捨て札の山からリードすることで、新たなラウンド(シュートアウトラウンド)を続けます。
 リードするプレイヤーは先のラウンドで使われた2枚を除く捨て札の山をよくシャッフルして、その一番上のカードをリードカードとして場に出します。
 シュートアウトラウンドの結果は以下の3通りです。

○捨て札の山から引かれたリードカードがそれをフォローした同スートのカードより強い時は、再び同じプレイヤーが山から1枚引いてシュートアウトラウンドを続けます(※場に出た2枚はゲームから除外され、捨て札の山には入りません)。

リードカードがそれをフォローしたカードより弱かった時は、手札からフォローのカードを出したプレイヤーが負け、敗者となります。

○リードカードと同じスートのカードを手札を持つプレイヤーが持っておらず、他のスートのカードを出した場合は、捨て札の山からリードしたプレイヤーが敗者となります。

【8人以上でのプレイ】
 www.bhabhi.orgでSingh氏はこのゲームを「2人以上の人数で可」としており、上限を定めていません。しかし、8人以上では最初に配られる手札の枚数が少なすぎるので、さらにトランプを1組足してカードを増やすよう示唆しています。
 7人まではトランプ1組52枚で可能として、何人なら何組足すのかの具体的な記述はありませんが、8~10人程度の参加人数ならトランプを2組使うことになるでしょう。
(※2組以上のトランプを使うと、同じカードが2枚以上場に出る可能性が出てきます。こうなった場合どうするのか? のルールも記述がありません。よって今のところ7人までをプレイ人数の上限としておくのが無難でしょう。例えば「同じカードの強弱は、先に出されたカードのほうが強いとする」といったルールにすると、2組以上を使用した多人数プレイにも対応できそうですが……)


 ゲームではタイトルであり敗者を示す「バビ(Bhabhi)」。ヒンドゥーやウルドゥー語で「義理の姉妹」のことだそうなのですが、なぜこの言葉が使われているのかはよくわかりません。
 調べてみると、バビとは現地ではおおむね「兄弟の奥さん」のことを指しますが、特に北インドやパキスタンでは「長男の妻」に用いられ、彼女たちは一族間の上下関係が厳格なヒンドゥー社会では夫である長男と並んで高い権威を持ち、尊敬を表すjiがついて「バビジ(Bhabhi ji)」と呼ばれたりもするようです。
 それがなぜ敗者の呼称になっているのか……ご当地流のウィットでしょうか?
 残念ながら、このゲームを4000回以上プレイしたと豪語し、ランチブレイクなどに最高なゲームの1つと絶賛するカナダ人のMark Klassen氏も「なぜ敗者はバビなのか」については委細を説明できないようですし、同じくカナダのオンタリオ州マルトン在住ながらインド系と思しきMoe Singh氏もそれについて彼のWebサイトには記していません(代わりに、というわけではないでしょうがページ末に「著名なバビ」として、ブッシュやクリントン、ビル・ゲイツをバビ化したコラージュを掲載しており、少なくともこのゲームにおいてバビがルーザー、敗北者を揶揄するイメージであることは間違いないようです)。

 その名の由来はさておき『バビ(Bhabhi)』はなかなか面白いルールです。
 スートをフォローしなくてはならないストップ、シェディングゲームはいろいろあると思いますが、このゲームは「マストフォローのトリックテイキング」の色彩が非常に濃く、おまけにミゼール(強いカードを出して取ったプレイヤーが負け)の要素が根幹に組み込まれています。
 Singh氏がサイトに置いている対コンピュータ戦のプログラムは基本ルールのみのシンプルなものです。紹介のためにルールを見た限り、Klassen氏の提示したスペシャルルールは少々煩雑になる面はあるものの(特に「シュートアウト」)どれもよさそうなので、それらも導入して機会を見てプレイしてみたいと思います。


【追記:シン氏のスペシャルルール】2013/04/26
 www.bhabhi.orgのモー・シン(Moe Singh)氏が「Special Circumstances(特別な状況)」として記しているルールについても紹介しておきましょう。
 基本的には上記の【スペシャルルール】のうち、2と4に該当します。「1.第1ラウンドの特別ルール」や「3.ラウンド終了前の特別ルール」に相当するものを、Singh氏は提示していません。

 すでに紹介したとおり、Singh氏は「2.他プレイヤーの手札を受け取る」のルールを、手札を渡すよう要求できる相手として、ゲームに残っている他のプレイヤーの誰でも指名できる、としています。

「4.シュートアウト!」については、このような残り2名に限っての敗者決定戦はSingh氏のルールにはありません。
 代わりに、氏のルールでは「各ラウンドで場に一番強いカードを出し、判定の結果、次のリードを行うこととなったプレイヤーは、たとえ手札がなくなっていても勝ち抜けできない」となっています。
 手札なしでリードすることになったプレイヤーは、捨て札の山をよくシャッフルしてそこから1枚引くか、他のプレイヤーの誰か(あるいは左隣のプレイヤー)から1枚無作為に引くか、どちらかを選んで引いたカードでリードし、ラウンドを続けなくてはなりません。
 つまり、このルールで勝ってゲームを抜けるには、手札の最後の1枚を場に出した時、それが「判定で他の人より弱いカード」であるか、あるいは「リードカードとは違うスートのカード」であるかのどちらかでなくてはならないのです。

 これら2つのルールを採用した場合、誰がどのカードを持っているのかを記憶しておくことがより重要になり、勝ち抜けに制限が加わるので「最後の1枚は何を残すか?」をあらかじめ考えてプレイすることになりそうです。

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